【海外資産×税務リスク対策】多層法人スキームの構築と出口戦略
「事業が軌道に乗り、利益も増えてきた。海外への投資や資産移転も視野に入れたい…」
「将来的なグローバル展開を見据え、海外に法人を設立するメリットを知りたい…」
「海外資産を持つことは、日本の税務上、どんなリスクがあるのだろうか?」
もしあなたが今、このような思いを抱えている経営者や資産家であれば、このページは、海外資産の税務リスクを正しく理解し、賢く管理するための極めて重要な情報源となるでしょう。
近年、グローバル化の進展や情報技術の発達により、海外に資産を保有したり、海外で事業展開したりすることは、もはや一部の富裕層や大企業だけのものではなくなりました。しかし、それに伴い、海外資産にまつわる税務は、国内の税務とは比較にならないほど複雑化し、高額な税務リスクを伴うのが現実です。
特に、インターネット上には、海外法人を活用した「節税スキーム」に関する断片的な情報も散見されますが、その多くはリスクを十分に説明していなかったり、法改正によって既に通用しなくなっていたりする危険な内容が含まれています。安易な情報に飛びつくことは、最悪の場合、多額の追徴課税や刑事罰、そして社会的信用の失墜に繋がりかねません。
この記事では、我々が税理士事務所として、複雑化する国際税務の最前線で多くの経営者や資産家の皆様をサポートしてきた経験から、海外資産保有における主要な国の活用動向から、多層法人スキームの基本的な考え方、そして日本の「タックスヘイブン対策税制」がもたらす影響、さらには非居住者移行時の「出国税」やCRSによる情報交換の実態まで、そのすべてを、現行の税法とリスク管理の視点から深く掘り下げて解説していきます。
この分野は極めて専門性が高く、個別の状況に応じた綿密な計画と、複数の専門家との連携が不可欠です。本記事は、具体的なスキームを推奨するものではなく、あくまで皆様が適切な判断を下すための「羅針盤」となることを目的としています。
さあ、海外資産のメリットとリスクを正しく見極め、あなたの資産とビジネスをグローバルな視点で盤石なものにしていきましょう。
海外に資産を保有したり、法人を設立したりすることには、日本国内だけでは得られない多様なメリットが存在します。しかし、同時に、その裏には複雑な税務上の「落とし穴」が潜んでいます。
なぜ海外資産に魅力を感じるのか?
多くの経営者や資産家が海外に目を向ける理由は様々です。
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- 資産の分散とリスクヘッジ: 日本経済や円の変動リスクに対するヘッジとして、海外の通貨や資産に分散投資することで、ポートフォリオ全体のリスクを低減したいというニーズがあります。
- 市場アクセスの拡大: 海外市場での事業展開や、成長著しい新興国の市場へのアクセスを目的とするケース。
- 投資機会の多様化: 日本では手に入りにくい金融商品や不動産、あるいは特定の技術を持つスタートアップ企業への投資機会を求めるケース。
- 事業効率化・国際税務戦略: 特定の地域に統括会社や持ち株会社を置くことで、グループ全体の国際税務を効率化し、税負担を適正化したいというニーズ(ただし、これは日本の税制で厳しく規制されています)。
これらの魅力の背景には、各国の税制、法制度、金融システム、そして政治経済の安定性といった要素が複雑に絡み合っています。
税務上の「落とし穴」:日本の税法は世界中を網羅する
海外に資産を持ったり、海外法人を設立したりする際に、最も注意すべきは「日本の税法は、原則として全世界の所得に対して課税する」という日本の税制の原則です。これを「全世界所得課税」 と呼びます。
つまり、あなたが日本に居住している限り、あるいはあなたの法人が日本法人である限り、たとえ海外で得た所得であっても、日本の税法に基づき、日本で申告・納税する義務が生じます。
この原則を踏まえずに海外に資産を移したり、法人を設立したりすると、以下のような深刻なリスクに直面する可能性があります。
- 二重課税のリスク: 海外の国で課税され、さらに日本でも課税されるケース。これは外国税額控除などの制度で一部軽減されますが、それでも完全には解消されない場合があります。
- 日本の課税強化: 特に「タックスヘイブン対策税制」は、低税率国にある外国法人を設立しても、実態が伴わない限り、その利益を日本で合算して課税するという強力なルールです。
- 「出国税」のリスク: 個人が海外移住する際に、日本の居住者でなくなったとしても、特定の高額資産には課税される制度。
- 情報交換による発覚: CRS(共通報告基準)などによる国際的な情報交換体制の強化により、海外資産の情報が日本の税務当局に自動的に知らされるようになっています。資産を隠すことはほぼ不可能です。
- 重加算税・延滞税・刑事罰: 不適切な税務処理や、意図的な所得隠しが発覚した場合、多額の追徴課税だけでなく、悪質と判断されれば重加算税や延滞税、さらには刑事罰の対象となる可能性もあります。
これらのリスクを回避するためには、海外資産に関する日本の税法を深く理解し、綿密な計画を立てることが不可欠です。
主要な海外拠点(シンガポール・香港・ドバイ)の活用と留意点
海外に法人を設立したり、資産を管理したりする際に候補となる主要な国・地域には、それぞれ独自の特性があります。ここでは、シンガポール、香港、ドバイの3つに焦点を当てて、その活用動向と、税務上の一般的な留意点を見ていきましょう。
シンガポール:金融ハブとしての安定性と税制優遇
シンガポールは、アジアの主要な金融ハブであり、その政治経済の安定性、優れたインフラ、そして明確な法制度により、多くの国際企業や富裕層から選ばれています。
- 魅力的な点:
- 低い法人税率: 法人税の基本税率は17%ですが、スタートアップ企業に対する優遇税制(創業から3年間、一定の条件で非課税枠や税率軽減)などにより、実効税率がさらに低くなる可能性があります。
- 源泉税の軽減: 配当や利子に対する源泉税が低い、あるいは免除される場合があります。
- 多国籍企業優遇: 研究開発や国際統括機能を持つ企業に対する税制優遇プログラムがあります。
- 健全な金融システム: 厳格なAML/CFT(資金洗浄対策・テロ資金供与対策)基準を持つ、信頼性の高い金融システムです。
- 留意すべき点(日本の税務との関連):
- 「実体」の重視: シンガポールは、単なるペーパーカンパニーではなく、現地での事業活動、従業員、オフィスといった「実体(サブスタンス)」を非常に重視します。実体が伴わない場合、シンガポール国内での税制優遇を受けられないだけでなく、日本のタックスヘイブン対策税制の対象となるリスクが高まります。
- CRSによる情報交換: CRS参加国であるため、日本の税務当局に口座情報が自動的に共有されます。
- 移転価格税制への対応: 日本親会社との取引がある場合、移転価格税制への対応が必要となります。
香港:シンプル税制と中国市場へのゲートウェイ
香港は、その地理的優位性とシンプルな税制により、長年、中国本土へのビジネス展開の足がかりとして、また国際貿易の拠点として機能してきました。
- 魅力的な点:
- シンプルで低い法人税率: 法人税率は原則16.5%ですが、利益の最初の200万香港ドルに対しては8.25%と、非常に低い税率が適用されます。
- 源泉税の原則なし: 配当や利子、ロイヤルティに対する源泉税が原則としてかかりません(一部例外あり)。
- 海外源泉所得の非課税(テリトリアル課税): 香港で得た所得にのみ課税され、香港域外で発生した所得は、一定の条件を満たせば非課税となる「テリトリアル課税」を採用しています。
- 留意すべき点(日本の税務との関連):
- 「オフショア所得」の判定厳格化: テリトリアル課税の適用には、香港内での事業活動と管理・運営が不可欠です。近年、香港税務当局も「実体」をより厳しく見る傾向があります。
- CRSによる情報交換: CRS参加国であるため、日本の税務当局に口座情報が自動的に共有されます。
- 政治的リスク: 近年の政治情勢の変化により、一部の投資家や企業は将来のリスクを考慮する場合があります。
タックスヘイブン対策税制のリスク: 香港の税率が低いため、日本のタックスヘイブン対策税制の対象となりやすい点は、シンガポールと同様です。
ドバイ(UAE):所得税・法人税が原則ゼロの新興ハブ
アラブ首長国連邦(UAE)、特にドバイは、近年、税制面での優位性から世界中の富裕層や企業から注目を集めています。
- 魅力的な点:
- 所得税・法人税が原則ゼロ: 個人所得税は非課税。法人税も、2023年6月以降導入された連邦法人税(CT)制度により、年間所得が375,000UAEディルハム(約1,500万円)を超える部分にのみ9%の税率が適用されますが、フリーゾーン内の一部企業は依然として優遇される場合があります。
- VAT(付加価値税)のみ: 消費税に当たるVATが5%課税されますが、所得税・法人税が原則ゼロである点は大きな魅力です。
- ビジネス環境の整備: フリーゾーン制度など、外国企業の誘致に積極的です。
- 留意すべき点(日本の税務との関連):
- 連邦法人税(CT)の導入: 2023年6月以降、原則として法人税が導入されたため、以前のような「完全に非課税」ではない点を正確に理解する必要があります。フリーゾーンの企業も、一定の条件を満たさない限り課税対象となります。
- 「実体」の重要性: ドバイでも、単なるペーパーカンパニーでは税制優遇を受けられないだけでなく、タックスヘイブン対策税制の対象となりやすいです。現地でのオフィス、従業員、事業活動といった実体が求められます。
- 国際的な情報共有: UAEもCRS参加国であり、金融口座情報は日本を含む各国税務当局と自動的に交換されます。
- 居住者認定の厳格化: ドバイに居住者として認められるための要件(物理的な滞在日数、生活の拠点など)も、年々厳しくなっています。
【共通する重要事項】
これらの国・地域は魅力的な点が多い一方で、日本の税務当局の視点から見れば、「低税率国」とみなされ、日本のタックスヘイブン対策税制の対象となる可能性が高いことを強く認識しておく必要があります。
単に税率が低いという理由だけで海外法人を設立することは、非常に危険な判断となり得ます。
多層法人スキームの構築と「タックスヘイブン対策税制」のリスク管理
海外法人を活用した「多層法人スキーム」は、特定の目的のために有効な場合もありますが、日本の「タックスヘイブン対策税制(CFC税制)」の存在により、極めて慎重な検討が必要です。
持株会社(HDカンパニー)+海外法人(BVI等)の二重構造とは
ここで言う「多層法人スキーム」の典型例は、日本の親会社の下に、海外の低税率国(かつては英領バージン諸島=BVIなどが多用されました)に子会社を設立し、さらにその子会社を通じて、別の国で事業を行う、といった二重以上の階層を持つ構造です。
この構造の目的として考えられるもの(かつての主な誘因):
- 税負担の軽減(合法性の問題があるケースも): 日本で利益を出す代わりに、海外子会社に利益を計上することで、グループ全体の税負担を軽減しようとする。
- 国際的な資金の効率的な管理: 海外子会社に資金をプールし、そこから別の海外子会社への投資や融資を行うなど、資金の流れを円滑にする。
- 知的財産(IP)の管理: 知的財産権を海外子会社に保有させ、そこからロイヤリティ収入を得ることで、税負担を軽減する。
- 事業展開の柔軟性: 特定の地域での事業展開を、日本の親会社から直接行うよりも、海外子会社を経由する方が柔軟性がある場合。
日本のタックスヘイブン対策税制(CFC税制)の概要と影響
制度の目的:
日本のタックスヘイブン対策税制は、企業が日本の税負担を逃れるために、実体のない外国法人を低税率国に設立し、そこに所得を留保するのを防ぐことを目的としています。
制度の概要:
日本の法人(または居住者)が、外国法人(外国子会社)の株式を50%超保有している場合(特定外国子会社等に該当する場合)、その外国法人の所在する国の法人税率が20%未満であると、その外国法人の利益は、たとえ日本に配当として還流されていなくても、日本の親会社の課税所得に合算され、日本で課税されます。
【課税されるかどうかの重要な判断基準:「経済活動の実体」】
- 事業基準: 主たる事業が株式の保有、無形資産の提供などではないこと(通常は事業活動を行っていること)。
- 実体基準: 外国法人が、その所在地国に主たる事業を行うために必要な事務所等を保有していること。
- 管理支配基準: 外国法人が、その所在地国において、事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること(日本からの指示で動いているペーパーカンパニーではないこと)。
- 非関連者基準(適用外): 主たる事業が卸売業、銀行業等で、その事業を非関連者との取引により行っていること。(投資会社等には適用されません。)
- 所在地国基準(適用外): 主たる事業を所在地国で行っていること。(これも投資会社等には適用されません。)
【タックスヘイブン対策税制がもたらす影響】
- 実体のない海外法人は無意味化: 上記の経済活動基準を満たさない限り、海外に法人を設立しても、その利益は結局日本で課税されることになり、税制上のメリットは得られません。
- 厳格な管理と証明: 「実体」があることを税務当局に証明するためには、現地での従業員の雇用、オフィス賃貸契約、銀行取引記録、議事録など、厳格な書類管理と運用が求められます。
- コスト増: 実体を伴う運営は、現地での人件費、オフィス賃料、法務・会計費用など、大きなコストを伴います。安易な節税目的での海外法人設立は、コスト倒れのリスクが高いです。
かつてBVI(英領バージン諸島)のような国・地域が、法人設立のしやすさや情報秘匿性から利用されましたが、現在はCRSによる情報交換の進展やCFC税制の強化により、単なるペーパーカンパニー設立による節税はほぼ不可能です。
リスク管理の徹底
タックスヘイブン対策税制のリスクを管理するためには、以下の点が不可欠です。
- 設立目的の明確化: 海外法人設立の真の事業目的を明確にし、その合理性を説明できるようにする。
- 「実体」の構築と維持: オフィス、従業員、事業活動など、形式だけでなく実質的な経済活動を伴うようにする。
- 厳格な会計・税務管理: 現地の会計基準・税法遵守はもちろん、日本のCFC税制にも対応した厳格な会計処理と税務申告を行う。
- 国際税務に強い専門家との連携: 日本の税理士だけでなく、現地の会計士・弁護士とも密に連携し、各国の法制度に対応したスキームを構築する。
非居住者移行(Exit)時の課税リスクと回避策(出国税)
海外に資産を持ち、あるいは海外法人を設立する検討をしている方の中には、将来的に自身が日本から海外に移住すること(非居住者移行、またはExit) を考えている方もいらっしゃるかもしれません。この場合、日本の「出国税」に注意が必要です。
出国税(国外転出時課税)の概要と対象者
出国税(国外転出時課税)とは、日本の居住者が海外に移住する際に、特定の高額な資産(有価証券など)の含み益に対して、まだ売却していなくても、まるで売却したかのように課税される制度です。
目的: 高額資産を持つ個人が、海外移住によって日本の課税を逃れることを防ぐために導入されました。
対象者(原則):
- 1億円以上の対象資産を保有する個人。
- 過去10年以内に5年以上日本に居住していた者。
対象資産(例):
- 株式(上場・非上場問わず)
- 投資信託
- 債券
- デリバティブ取引に係る権利
- その他、特定の仮想通貨など
課税の仕組み:
対象資産を「時価で売却したものとみなして」所得税・復興特別所得税が課されます。つまり、まだ売却して現金化していなくても、税金が発生します。
【猶予措置と納税の免除】
- 納税猶予: 確定申告書に所定の事項を記載し、納税管理人の届出書を提出すれば、納税が猶予されます。
- 納税の免除: 納税猶予期間中に納税義務者(国外転出者)が帰国した場合など、一定の要件を満たせば、猶予されていた納税が免除されます。
出国税の回避策と留意点
出国税は高額な税負担となる可能性があるため、海外移住を検討している場合は、事前の対策が非常に重要です。
対象資産を1億円未満に抑える:
- 資産の一部を配偶者や子供に贈与することで、対象資産を1億円未満に減らす方法が考えられます。ただし、贈与税が発生しますし、「名義預金・名義株式」とみなされないよう、正当な贈与であることを証明できる必要があります。
- 資産の種類を変える: 出国税の対象とならない資産(例えば、現金、預貯金、不動産、動産など)に組み替えることも考えられます。しかし、これも売却益に対する課税や、不動産売却の難易度などを考慮する必要があります。
日本居住期間の調整:
- 過去10年以内に5年以上日本に居住していなければ、そもそも出国税の対象にはなりません。留学や海外赴任など、過去の居住歴を正確に確認しましょう。
海外への持ち出しタイミングの検討:
- 出国税は、あくまで「国外転出時」に課税されるものです。対象資産を国外転出前に売却し、日本の税金を支払う、という選択肢もあります。
- また、含み益が小さい時期に出国する、というタイミングの検討も重要です。
海外への持ち出しタイミングの検討:
- 出国税は、資産の種類、金額、居住期間、移住先の国など、個別の状況によって適用関係や対策が大きく異なります。
- 必ず、国際税務に精通した税理士に事前に相談し、最適な対策とシミュレーションを行ってもらうことが不可欠です。
CRS(自動情報交換)下での情報漏洩と銀行との付き合い方
国際的な税務透明性向上の流れを受け、CRS(共通報告基準)に基づく金融口座情報の自動交換制度が世界的に普及しています。これにより、海外に隠し資産を持つことは、ほぼ不可能になりました。
CRS(共通報告基準)の仕組みと情報交換の実態
CRS(Common Reporting Standard)とは、経済協力開発機構(OECD)が策定した、各国の金融機関が保有する非居住者の金融口座情報を、関係国間で自動的に交換する国際的な枠組みです。
- 目的: 国境を越えた脱税や租税回避行為を防止し、税務の透明性を高めること。
- 参加国: 執筆時点(2025年6月末)で、日本を含む100以上の国・地域がCRSに参加しており、毎年情報交換を行っています。
- 交換される情報:
- 口座保有者の氏名、住所、居住地国、納税者番号(日本のマイナンバーなど)
- 金融機関の名称
- 口座番号
- 口座残高または価値
- 利子、配当、その他収入の合計額
- 金融資産の売却による収益の合計額
情報交換の実態:
日本の金融機関は、非居住者の口座情報を毎年国税庁に報告し、国税庁はそれを各国の税務当局に送ります。同時に、各国の税務当局は、日本の居住者が持つ海外口座の情報を国税庁に送ってきます。
これにより、日本の税務当局は、あなたが海外のどの国のどの金融機関に、どのような口座を持ち、いくらのお金や資産があるのか、そしてそこからどれだけの所得を得ているのかを、自動的に把握できるようになりました。
【情報漏洩ではなく「情報交換」】
CRSは「情報漏洩」ではなく、国際的な合意に基づく「情報交換」 です。これは、「海外に資産を隠すことはもはや不可能である」 ということを意味します。隠そうとすればするほど、悪質な脱税として重いペナルティの対象となります。
銀行との付き合い方と今後の注意点
CRSの導入により、銀行の顧客確認(KYC: Know Your Customer)やデューデリジェンス(顧客資産の調査)は、より厳格化しています。
情報提供の義務:
海外の銀行で口座を開設する際や、既存口座の情報を更新する際に、あなたは自身の居住地国や納税者番号などの情報提供を求められます。これを拒否したり、虚偽の情報を提供したりすると、口座開設ができなかったり、既存口座が凍結されたり、さらには法的措置の対象となる可能性があります。
「実体」と「目的」の明確化:
海外の銀行も、口座開設の際に、その口座の「事業目的」や「資金の出所」について厳しく審査します。特に、低税率国での法人設立や口座開設は、その「実体」と「目的」を明確に説明できなければ、口座開設自体が困難になる、あるいは拒否されるケースが増えています。
金融機関の選定:
健全なガバナンスを持ち、AML/CFT基準を厳格に遵守している金融機関を選びましょう。安易に「簡単に開設できる」といった金融機関を選ぶと、後でトラブルに巻き込まれる可能性があります。
税務コンプライアンスの徹底:
海外に資産を持つ場合、日本の税務申告はもちろんのこと、海外の税務申告も適切に行うことが必須です。二重課税を防ぐための「外国税額控除」などの制度活用も、適切に行いましょう。
【最も重要なメッセージ】
CRSの時代において、海外資産の税務における「隠蔽」という選択肢は消滅しました。これからは、「いかに透明性を高く保ちながら、合法的に効率的な国際税務戦略を構築するか」 という視点が極めて重要になります。
まとめ:海外資産と税務リスクは、プロフェッショナルとの協働が必須
海外に資産を保有したり、海外法人を設立したりすることは、ビジネスの機会拡大や資産の分散といった大きなメリットをもたらす可能性があります。しかし、その背後には、日本の複雑な国際税務、特に「タックスヘイブン対策税制」や「出国税」といった、極めて厳格なルールが存在し、CRSによる情報交換によって、そのすべてが日本の税務当局に開示される時代となっています。
- 低税率国での法人設立は、「実体」がなければ日本の税務当局から合算課税されるリスクが高い。
- 個人が海外移住する際は、高額な資産の「含み益」に課税される「出国税」に要注意。
- CRSにより海外資産の情報はすべて日本の税務当局に自動で共有される。隠し資産はもはや不可能。
これらのリスクを回避し、合法的に、そして戦略的に海外資産を管理していくためには、「安易な自己判断はせず、必ず専門家と協働する」 ことが、唯一にして絶対の鉄則です。
我々のような日本の税理士は、国際税務に関する最新の知識と豊富な経験を持ち、あなたの会社の状況や個人の資産状況を深く理解した上で、以下のサポートを提供できます。
- 最適な国際税務戦略の立案支援: 海外法人設立の必要性、場所、スキームの適切性などを総合的に判断し、アドバイス。
- タックスヘイブン対策税制のリスク評価と対策: 貴社の海外法人がCFC税制の対象となるか否かの判断と、対象となる場合のリスク軽減策の提案。
- 出国税に関するシミュレーションと対策: 海外移住を検討されている場合、出国税の試算と最適な資産構成・移住タイミングのアドバイス。
- CRS対応と税務申告: 海外資産に関する日本の税務申告を正確に支援し、コンプライアンスを徹底。
- 現地専門家との連携支援: 必要に応じて、現地の会計士、弁護士など、信頼できる専門家との連携をサポート。
国際税務は、税務のプロである我々でも、常に最新の情報を学び続け、細心の注意を払う必要がある領域です。ぜひ、あなたの貴重な資産とビジネスを守るために、我々をあなたのパートナーとしてご活用ください。
【追記】
本記事は、2025年6月末現在の法令等に基づき作成しています。国際税務に関する法制度や各国の税制、国際的な情報交換の枠組みは、今後も急速に進化・変化する可能性があります。海外資産の保有や国際的な事業展開を検討される際は、必ず最新の情報を確認し、国際税務に精通した専門家(日本の税理士及び必要に応じて現地の税務専門家)に個別にご相談ください。本記事は一般的な情報提供であり、具体的な税務アドバイスを提供するものではありません。
「海外資産に関する税務リスクを詳しく知りたい」「海外法人設立を検討しているが、何から手をつければ良いか分からない」「海外移住を考えており、出国税が心配だ」と感じている経営者・資産家の皆様へ。
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